認知症と日本の漢方薬

漢方診療のレッスン(花輪寿彦:金原出版)より引用

典型例や経過の進んだものは効果が期待しがたいが、周辺症状の改善をめざして漢方薬を処方することは意義がある。特に「なんとなくおかしい」という段階では、ときにドラスティックに改善することがある。

①全身症状を勘案して
加味帰脾湯補中益気湯六君子湯八味地黄丸などの補剤が選択される。ただし、高齢者で便秘傾向を伴うものには大黄剤が考慮される。
②最近は
黄連解毒湯(脳血管障害型)と当帰芍薬散(アルツハイマー型)が注目されている。
釣藤散抑肝散など釣藤を含む処方は、釣藤がセロトニン系の代謝を賦活するため臨床的に有用である。
④北里研究所附属東洋医学総合研究所の山田陽城らは
加味雲胆湯の効果に注目している。動物実験で基底核コリン作動性神経細胞のコリンアセチルトランスフェレース活性改善作用があるという。


病名漢方治療の実際(坂東正造:メディカルユーコン)より引用

痴呆症・老年痴呆
 base:
当帰芍薬散  本方は、当帰、川芎で脳の血行をよくし、白朮、茯苓、沢瀉が脳の浮腫を改善することにより老年痴呆を予防、治療する
 ①脳血管性
  a.一般に +通導散合桂枝茯苓丸、 b.高血圧・動脈硬化に +釣藤散、 c.脳出血後のボケ(脳浮腫を伴うとき) +続命湯、 d.健忘症状、あくび、体力低下、肩こり、手足のしびれ +補中益気湯
 ②アツツハイマー型
  a.一般に +芎帰調血飲第一加減、 b.健忘症状、あくび、体力低下、肩こり、手足のしびれ +補中益気湯


漢方治療44の鉄則(板東正造:メディカルユーコン)

老年痴呆(脳神経系疾患・抑うつ状態)
 base:
当帰芍薬散
 ①健忘症、あくび、体力低下を伴うもの +補中益気湯
 ②高血圧症、脳動脈硬化症 +釣藤散
 ③脳出血、脳梗塞の予防 +通導散合桂枝茯苓丸
 ④脳出血後のボケ +続命湯(煎)
 ⑤便秘症 +桃核承気湯or麻子仁丸(老人で腸管が乾燥するもの)

漢方123処方 臨床解説(福富稔明・山方勇次:メディカルユーコン)

 治打撲一方抑肝散(認知症の周辺症状)、当帰芍薬散(脳血管障害性・老人性認知症)、帰脾湯加味帰脾湯(食事をしながら口に食べ物を入れて眠ったりする老人性認知症)


漢方処方の臨床応用3(神戸中医学研究会):THE KAMPO叢書)

 補陽還五湯(気虚を伴うボケ)

耳鼻咽喉科早わかり漢方薬処方ガイド(市村恵一:中山書店)

 脳血管障害や認知症
 脳血管障害において実証から虚証への順によく使用されるのは、下記のような循環改善作用がある薬剤である。
 
黄連解毒湯(実証)、桂枝茯苓丸釣藤散八味地黄丸当帰芍薬散真武湯(虚証)
 認知症は肝の失調からくることが多い。また異常行動も同様と考えてよい。これには
抑肝散、胃腸障害などがあれば抑肝散加陳皮半夏がよい。
 軽度な手のふるえなどはこれらの方剤でふるえがとれることがある。また
釣藤散も認知症によく使用される。
 循環改善作用が認知症の改善に貢献しているようである。


循環器医が知っておくべき漢方薬(北村順:文光堂)

 認知症の周辺症状
 
抑肝散は、認知症の周辺症状(BSPD)に効果がある。BSPDは、易怒性、興奮、妄想、幻覚、徘徊、火の不始末など、介護の現場を疲弊させてしまう症状で、抑肝散によって症状が軽減することがわかった。


高齢者プライマリケア漢方薬ガイド(加藤士郎:中山書店)

漢方薬による治療効果が高いのはBPSD症状に対してである。
 陽性症状(暴力、暴言、徘徊、狂言、妄想、幻覚など)⇒①
抑肝散大黄甘草湯黄連解毒湯。②抑肝散加陳皮半夏甘麦大棗湯桂枝加竜骨牡蛎湯
 陰性症状(無気力、無関心、無動、うつ状態など)⇒①
補中益気湯六君子湯半夏厚朴湯。②当帰芍薬散香蘇散十全大補湯

その他、認知症の使用例として出てくる処方名

黄耆建中湯帰耆建中湯柴胡加竜骨牡蛎湯柴胡桂枝湯柴朴湯四君子湯続命湯疎経活血湯大柴胡湯独活寄生湯など